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「部屋に入ったら鍵があるからきちんと掛けなさい。『七ひきの小ヤギ』だよ。」
「…七ひきの…小ヤギ?」
会長は何を言っているんだろう。
「夜のうちに私と渉、それに佐和子さんが君に用がある時は必ず部屋の内線で連絡してから部屋に行くから。『誰かが部屋に来ても決してドアを開けちゃいけないよ。』」
会長は物語のセリフのように最後の言葉を付け足した。
「はい。」
ちょうどその時、お風呂から上がった大塚さんがタオルで髪の毛を拭きながらダイニングに戻って来た。
一瞬にしてガラリと変わる部屋の空気。
「あー。いい気持ちでした。」
彼の能天気な言葉が場違いだった。
「桐谷。行け。」
渉さんももう態度を変えている。
「では、私が…。」
佐和子さんが私と一緒にダイニングを出ようとすると、渉さんが立ち上がる。
「サワさん、俺が行く。便所に行くついでだ。」
私は渉さんと一緒に部屋を出た。
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