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部屋一杯に苦痛の叫び声が響き渡った。
女の悲鳴は自己中なもので、冬馬のところへ逝けるという微塵の考えも感じられなかった。
「あらら……弓寛駄目よ。臓物は丁寧に、さばかないと。いつも言っているでしょう? あの輪に吊るしてからって」
「この子も病気を治そうと必死なんだろう……」
魅羅が心配そうに現れ、久実を食べ続ける弓寛を見ていた。
山田家では試し切りの役を言い渡され、代々務めてきた。決して良い役ではないのに、その収入は大したものではなかった。
腕を劣らせないよう、刀の試し切りようの死体を持ち帰ることを許されていた祖先は、遺体から臓物を取り出し、薬を調合しては人々の病を治してきた。
主の仕事より、この薬製造の生業で、莫大な財産を築きあげていったのだ。
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