最後の試練-1

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走りながら空の雲行きに顔をしかめた。 今にも雨が降り出しそうだった。 日射しはきつくないが、じっとりとした空気が体を包む。 その中を少し走っただけで汗でTシャツの色が変わっていた。 『望愛…。』 『望愛…。』 『どこにいる…。』 『望愛…。』 心の中では何度も呼んでいるのに、声には出せなかった。 走ったせいで喉がカラカラに乾いているのに加え… アイツがいなくなった恐怖で喉が潰れそうだった。 …恐怖。 まさに俺は恐怖を感じていた。 アイツを失うかもしれない… それは俺にとって 恐怖と不安でしかなかった。 「…望愛。」 小さく呟いた時だった。 ポツ。 ポツ。 ポツ。 「クソッ。」 雨だった。 空を見上げる。 灰色の空からは無数の滴(シズク)が落ちて俺の顔を濡らした。 拳(コブシ)を握る。 この空は…アイツだ。 アイツもきっと、こんな風に泣いている。
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