最後の試練-1

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雨の中を歩きながら 何度も引き返そうと思った。 何度も。 何度も。 こんな風に濡れる必要はないんじゃないかって。 だけどそうしないのは… こんな風になっても 渉さんが見つけてくれるんじゃないかって… どこかでそれを望んでいるのかもしれない。 人目をなるべく避けた道を来たつもりだけれど、前方には避けては通れない大通り。 私は店の軒下(ノキシタ)に隠れるように雨から逃れて立ち止った。 どうしようかと大通りを見つめていると急に横から声を掛けられた。 「そんなに濡れちゃって大丈夫?」 知らない人だった。 「…大丈夫です。」 とても大丈夫そうには見えないだろうけど。 「そんなんじゃ風邪引くよ。僕、車だから家まで送るよ。」 彼が私の腕を取ろうとした。 その時。 「待たせてすまない。」 声を掛けてきた男性の向こうから、傘をさした男性が走ってくる。 ねえ… どうしてこんな時に…。 タイミングよく現れるのは… おとぎ話の中じゃ王子さまだって決まってる。 私を助けてくれるのは… やっぱり… …王子様なの? 「桐谷君…。」 ねえ、 室長…。
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