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室長は彼から私を遮って、彼は室長の視線に押されてその場を去った。
室長はずぶ濡れになった私を見て…
『どうしたんだ?』
そうは言わなかった。
「…来なさい。車だから。」
静かな声でたたみかけるようにそう言った。
それでも私の足は動かなかった。
「来るんだ。」
室長は私の肩を引き寄せて自分の傘に私を入れた。
「…震えてるじゃないか。」
室長は小さく言って、歩調を早めた。
室長の車まで来ると、室長が後部座席の席を開けた。
「後ろの方がいいだろ。」
私は小さく頷いた。
目立つ色ではないけれど、上半身は下着のラインがわかってしまうほど濡れている。
でも…
「…座席のシート…濡れちゃま…す。」
「構わない。すぐに着くから。これしかないけど。」
室長は自分のハンカチを差し出した。
「…ありがとうございます。」
室長はドアを閉めて、自分は運転席に乗り込んだ。
そして、車は静かに走り出した。
ハイブリット車。
無言の車内。
静かすぎて…
うるさかった。
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