2272人が本棚に入れています
本棚に追加
マンションのエントランスを抜けて、エレベータに乗る。
室長との会話もなく、私は意志の無いロボットのように動いていた。
階に到着し、エレベーターが止まった。
室長に促されてエレベーターを降り、室長の背中を見ながら先に進む。
室長の背中…。
渉さんとは違って少し撫で肩。
室長はその背中を私に向けて、ドアの鍵を開けていた。
意志をなくしたロボットの心臓が再び大きく震えだす。
室長がドアを開けて自分から先に部屋に入り、続いて私が入るのを待っている。
「入りなさい。」
私の足は動かなかった。
ここに足を踏み入れてしまったら…
渉さんに見つけてもらえない。
私が追いかけたいのは…
この背中じゃない。
涙が溢れた。
「…すみません。お金を…。お金を貸して下さい。」
私は室長に頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!