2272人が本棚に入れています
本棚に追加
「気を付けていきなさい。」
俺はマンションの下まで彼女を送り、通りでタクシーを拾って彼女を乗せた。
彼女はまだ声を出せずにいた。
でも、
俺と桐谷君はアイコンタクトが使える間柄だ。
彼女の真っ赤な瞳は
何度も『ごめんなさい』と『ありがとう』を繰り返していた。
「…いいんだよ。」
俺の言葉に彼女は顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
驚く運転手に出るように促して、彼女を乗せたタクシーは去って行った。
渉が憎かった。
憎くて、憎くて
心底うらやましかった。
最初のコメントを投稿しよう!