最後の試練-1

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「気を付けていきなさい。」 俺はマンションの下まで彼女を送り、通りでタクシーを拾って彼女を乗せた。 彼女はまだ声を出せずにいた。 でも、 俺と桐谷君はアイコンタクトが使える間柄だ。 彼女の真っ赤な瞳は 何度も『ごめんなさい』と『ありがとう』を繰り返していた。 「…いいんだよ。」 俺の言葉に彼女は顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。 驚く運転手に出るように促して、彼女を乗せたタクシーは去って行った。 渉が憎かった。 憎くて、憎くて 心底うらやましかった。
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