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タクシーの運転手さんが驚いているのはわかってる。
訝(イブカ)しげで、憐(アワ)れんだ視線がバックミラー越しに私に突き刺さる。
面倒なお客を乗せるのは嫌なんだろう。
そんなことはわかってるけど…
涙が止まってくれなかった。
こんなにも涙で滲んで真っ赤な目でも…
室長とのアイコンタクトは出来てしまった。
『…いいんだよ。』
室長の優しい声が耳に残って離れない。
優しい瞳が頭から離れない。
ねえ、室長…。
アイコンタクトなんだから、私にだって室長の気持ちがわかってしまう。
微笑んだ瞳の奥で…
室長は泣いていた。
それでも私の気持ちをくみ取ってくれた室長の優しさを
今更ながらに…痛感した。
勇敢で、優しくて
やっぱり室長は王子様だったのかもしれないけれど…
私は室長のお姫様にはなれなかった。
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