最後の試練-1

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タクシーの運転手さんが驚いているのはわかってる。 訝(イブカ)しげで、憐(アワ)れんだ視線がバックミラー越しに私に突き刺さる。 面倒なお客を乗せるのは嫌なんだろう。 そんなことはわかってるけど… 涙が止まってくれなかった。 こんなにも涙で滲んで真っ赤な目でも… 室長とのアイコンタクトは出来てしまった。 『…いいんだよ。』 室長の優しい声が耳に残って離れない。 優しい瞳が頭から離れない。 ねえ、室長…。 アイコンタクトなんだから、私にだって室長の気持ちがわかってしまう。 微笑んだ瞳の奥で… 室長は泣いていた。 それでも私の気持ちをくみ取ってくれた室長の優しさを 今更ながらに…痛感した。 勇敢で、優しくて やっぱり室長は王子様だったのかもしれないけれど… 私は室長のお姫様にはなれなかった。
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