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しばらく走り回ったが、アイツの姿は見つけられなかった。
打ちつける雨。
滲む視界。
焦る気持ちとは逆に足が動かなかった。
すぐに捕まえられるとたかをくくってた自分が腹立たしい。
失ったら…
…二度と手に入らないかもしれないのに。
だから…
失うわけにはいかなかった。
それに、
まだ本当に手に入れたわけじゃねえ。
…考えろ。
もしも近くにいないとしたら、何かで移動したかもしれねえ。
買い物帰りでいくらか金も持ってたかもしれねえ。
どこだ。
アイツならどこに行く。
一瞬、頭をよぎる菊森の顔。
握っていた携帯を持ち直す。
菊森に電話をしようと思って…
…やめた。
アイツはそんな女じゃねえ。
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