最後の試練-1

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雨の高速道路。 スピードの増す車。 車を運転している間、ただひたすらにアイツのことを想っていた。 アイツのことしか考えられなかった。 『渉さん。』 『渉さん。』 『渉さん。』 俺の中では笑ったアイツが 何度も、何度も 俺を呼ぶ。 「望愛…。」 女の名前を呟いちまうなんて 俺はどうかしてるのか。 雨を避(ヨ)ける忙(セワ)しないワイパーの動きが俺の焦る気持ちと重なった。 ハンドルを握る手には熱がこもり、アクセルを踏み込む足にも力が入る。 あの川はアイツと一度行っただけ。 地元の者にしかわからないような道にも入ったはずだ。 でも、俺は 少しも忘れてなんかいなかった。 迷いもなく 頭の中で地図を描き、 俺はあの時の道を あの時、アイツと進んだ道を アイツのことだけを想って 進んだ。 望愛…。 …会いたい。
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