最後の試練-1

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最寄駅で降りて、家まで歩く。 靴は替えていなかったので、足元は冷たいままだった。 実家では母が手ぶらの私をどんな風に迎えるだろう…。 そんな私の心配は… しなくてもいいものだったらしい。 何の荷物も持たず、汚れた靴を履いた私を、母はいつも通りに迎えてくくれた。 「…おかえり。」 「あたたかいもの飲むでしょう?」 母はそう言って紅茶を入れてくれた。 「シャワー浴びる?」 母は何でもないように言った。 「ううん。後にする。これ飲んだら少し出掛けるから。すぐに戻るね。」 「…そう。」 母の心配そうな顔に、大丈夫だよと笑ってみせた。 紅茶を飲んで、置いてあった靴を履き直して家を出た。 小さい頃は自転車で行けた距離。今は歩いてでも行けるはずだった。 外はもう傘をささなくても大丈夫。 私は冷えた体を温めるように少し早足で “思い出の場所”へ向かった。
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