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最寄駅で降りて、家まで歩く。
靴は替えていなかったので、足元は冷たいままだった。
実家では母が手ぶらの私をどんな風に迎えるだろう…。
そんな私の心配は…
しなくてもいいものだったらしい。
何の荷物も持たず、汚れた靴を履いた私を、母はいつも通りに迎えてくくれた。
「…おかえり。」
「あたたかいもの飲むでしょう?」
母はそう言って紅茶を入れてくれた。
「シャワー浴びる?」
母は何でもないように言った。
「ううん。後にする。これ飲んだら少し出掛けるから。すぐに戻るね。」
「…そう。」
母の心配そうな顔に、大丈夫だよと笑ってみせた。
紅茶を飲んで、置いてあった靴を履き直して家を出た。
小さい頃は自転車で行けた距離。今は歩いてでも行けるはずだった。
外はもう傘をささなくても大丈夫。
私は冷えた体を温めるように少し早足で
“思い出の場所”へ向かった。
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