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頭上から聞こえる声。
橋の上から渉さんが顔を覗かせる。
見上げる私。
『…望愛。』
見上げた渉さんがもう一度私の名前を口にした。
だけど…
声にはなっていなかった。
自分の体が今にも崩れ落ちそうだった。
遠目にもわかる雨に打たれた渉さんの表情は…
泣いた後の子供のように寂しげだった。
強引で
俺様で
モンスターな渉さんの初めての表情に
再び涙が溢れ出す。
『渉さん。』
私も渉さんを呼びたいのに…
もう…
言葉にすることはおろか…
唇さえも上手く動いてはくれなかった。
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