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二人の思い出の場所。
橋のたもとに車を止めて、ゆっくりと橋に向かう。
あんなにも急(セ)いて、車を飛ばして来たのに、
いざ、ここに来ると動きが妙にゆっくりしていた。
俺は怖かった。
ここに…
アイツがいなかったら…。
そう思うと
怖くて怖くてたまらなかった。
橋に足を掛けて川を覗く。
膝から崩れ落ちそうになっていた。
俺はそうならないように橋の手すりに手を掛けて体を支えながらアイツを呼んだ。
「…望愛。」
自分でも情けなくなるくらいひ弱な声だった。
その声は川の流れにかき消されたと思ったが…
アイツは俺の小さな声に反応した。
見上げるアイツの顔は
どれだけ濡れたのか…
どれだけ泣いたのか
化粧っ気はまるでなく、目の周りが赤らんでいた。
『…望愛。』
もう一度呼んだが
声にはならずに
ただ、瞼(マブタ)の奥が熱かった。
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