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涙でぼやける視界の中で
渉さんは橋を駆け渡り、岩場を滑るように降りてきた。
いつの間にかすぐそばまで来ていた渉さんが、まるで体当たりでもするかのように勢いよく私を抱きしめた。
渉さんのカラダは
雨に濡れて…
…雨よりも冷たかった。
渉さんの力強い腕が
私の胸の奥まできつく抱きしめてくれた。
「二人で来るって言ったろ?勝手に一人で来てんじゃねえよ。」
「…ごめんなさい。」
私が渉さんの胸の中でかすれた声で返事をすると
渉さんの腕にいっそう力が込められた。
カラダも心も…
苦しくて…
…愛おしかった。
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