最後の試練-1

6/40
前へ
/40ページ
次へ
そんなことも… 確かに昔は言ってたかもしれねえ。 今はそれが都合がいい。 「それもあるな。ま、もともと俺の趣味じゃねえけど。とにかく面倒なのはごめんだ。お前も止めとけ。」 「…だね。俺、もっと遊びたいし、一人のコに縛られるのは嫌なんだよね。今まで経験がないなんて、一度ヤッたら結婚とか言い出しそうで怖いな。…望愛ちゃんてそういうタイプ?」 「知らねえよ。」 「もしかしてさ、本当に望愛ちゃんと親父さんが…とかになったら渉どうすんの?」 「カンケーねえよ。」 「だって、同じ屋根の下で親父さんと望愛ちゃんが…。渉、耐えられる?ま、渉のことだがら他で発散するか。」 「うるせえな。」 「じゃ、俺帰るわ。望愛ちゃんのことはあきらめたけど、今後の会長と望愛ちゃんとのことは気になるからまた教えてよ。昼ドラみたいじゃん。今度は外で会おうよ。若者は若者同士さ。女の子にも声掛けとくし。」 「一人で行けよ。時間もねえし。」 「またまた。渉の気に入りそうなタイプも知ってるし。任せとけ。じゃあな。せいぜい悶々(モンモン)としろよ。」 俺は玄関までアイツを追い出すように急かして見送った。 アイツが外に出て玄関のドアを閉めた時には、今までの人生で一番大きなため息をついた。 バカな奴の相手は本当に疲れる。 俺はダイニングに戻って時計を見る。 …もう12時じゃねえか。 つうか、 アイツ、遅くねえか? そう思いながらアイツに飲み物を出さなかった分、俺も喉がカラカラで冷蔵庫を開けた。 …ん? 買い物… 終わってんのか? 水を取り出して一本のボトルの半分ほどを一気に飲む。 ふと、目をやったキッチンの床に… アイツの小ぶりなバッグが置いてある。 やっぱ、戻ってんのか。 どこ行ってんだ? 俺はペットボトルのふたを閉め、アイツを探しにダイニングを出た。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2272人が本棚に入れています
本棚に追加