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──戦が終わる
──終焉を迎える
──全てのモノが絶えた時
──世界は救われる
──世界に無はいらない
──世界に必要なのは愛
──世界が泣く
──世界が笑う
──紺碧の空を もう一度
──真っ白な愛を もう一度
「優しい歌だね。優しくて美しい」
「古代の歌よ」
「戦に行く男達。彼等の無事を祈って女達が歌ったのが最初だと言われている」
「そうね」
この歌を聞くのが彼は好きだった。彼女が歌う、この歌を。
「また来るよ。また聞かせてほしい」
「お好きに」
彼の背中を見送った後、彼女はクスリと笑った。
実はこの歌には、続きがある。
──戦が終わる
──終焉を迎える
──全てのモノが絶えるなら
──世界は真の終わりを迎える
──貴方のいない世界などいらない
──貴方のいない世界など無意味
──世界を壊してしまいましょう
──全てを終わらせてしまいましょう
言い伝えとは違い、最初に歌ったのは天使である。長い黒髪の、美しい天使。
彼女はその天使を知っている。そして聞いた。悲しみと怒りに満ちた、この歌を──残忍な赤を纏った姿と共に。
「人間は浅はかだ……」
天使がその後、どうなったかも知らずに──……
彼女は歌い続ける。優しい微笑みの中に、真実を隠しながら。
~ fin ~
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