3羽目.おれと患者とゴールデンウィーク。

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真後ろに、ずっと座っていたのか。 「・・・誰ですか」 声が震えてしまったがそんなの関係ない。平常心だ。 すると、男がおれの頭をなでながら笑い出した。 気持ち悪い。触られた場所をかきむしりたくなった。 「そんな事、後でちゃんと教えてあげるよ」 男の手が移動する。ゆっくりと、頭から、頬に行き、顎の下をまるで猫にするみたいにして触ってきた。 「触るな、これをはずせ!」 男から遠ざかろうとするが、無駄だった。男はおれにまたがって動きを止めた。 気持ち悪い。どうしよう。とても気持ちが悪い。触れている部分全て骨から溶かしてしまいたい。 「駄目だと言っているじゃないか  唐丸は、これからずっと、僕と暮らすんだ」 さっきより顔を寄せて言う男。 まだ何か言っているが、頭には何も入ってこない。 気持ち悪い。ただでさえこんな場所に連れてこられていやだというのに。見知らぬ男にまたがれて、顔中べたべた触られて、話す度に耳に息がかかって。 もういやだ。何なんだ、この人は。両腕もずっと体の下に固定されて痛いし。 「帰してくださいっ、誰なんですかあなたは!」 「だから帰さないってば  僕は・・・君の運命の相手だよ」 こんな事をする人が運命の相手なわけあるか。 どうしよう、どうすればいいんだ。ここから出なければいけないけど、縄があるし、なにより、この男が邪魔だ。 親は今家にいないし当分帰ってこない。兄ちゃんは学校の用事があるから少し遅くなるって言ってた。 こんな事なら遠慮しないで携帯電話買ってもらえばよかった。 誰だよ、中学生に携帯はまだ早いとか言ったの。 はい、おれだね。たった1人のおれですね。 ・・・落ち着け、落ち着くんだおれ。焦ったってしょうがない。 あとで答えられるようにこの男の特長を覚えておこう。 顔は・・・暗いしサングラスとマスクのせいでわからない。髪は短い。 身長はおれより大きそうだ。手が大きい人は背も大きいって言うし。 声は、マスクで聞き取り辛い。とりあえず、低いけど、そんなに年をとってる感じはしない。 年齢は20歳後半・・・いや、30代だと思う。 考えている間も男の手はやたらと顔を触ってくる。
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