36人が本棚に入れています
本棚に追加
真後ろに、ずっと座っていたのか。
「・・・誰ですか」
声が震えてしまったがそんなの関係ない。平常心だ。
すると、男がおれの頭をなでながら笑い出した。
気持ち悪い。触られた場所をかきむしりたくなった。
「そんな事、後でちゃんと教えてあげるよ」
男の手が移動する。ゆっくりと、頭から、頬に行き、顎の下をまるで猫にするみたいにして触ってきた。
「触るな、これをはずせ!」
男から遠ざかろうとするが、無駄だった。男はおれにまたがって動きを止めた。
気持ち悪い。どうしよう。とても気持ちが悪い。触れている部分全て骨から溶かしてしまいたい。
「駄目だと言っているじゃないか
唐丸は、これからずっと、僕と暮らすんだ」
さっきより顔を寄せて言う男。
まだ何か言っているが、頭には何も入ってこない。
気持ち悪い。ただでさえこんな場所に連れてこられていやだというのに。見知らぬ男にまたがれて、顔中べたべた触られて、話す度に耳に息がかかって。
もういやだ。何なんだ、この人は。両腕もずっと体の下に固定されて痛いし。
「帰してくださいっ、誰なんですかあなたは!」
「だから帰さないってば
僕は・・・君の運命の相手だよ」
こんな事をする人が運命の相手なわけあるか。
どうしよう、どうすればいいんだ。ここから出なければいけないけど、縄があるし、なにより、この男が邪魔だ。
親は今家にいないし当分帰ってこない。兄ちゃんは学校の用事があるから少し遅くなるって言ってた。
こんな事なら遠慮しないで携帯電話買ってもらえばよかった。
誰だよ、中学生に携帯はまだ早いとか言ったの。
はい、おれだね。たった1人のおれですね。
・・・落ち着け、落ち着くんだおれ。焦ったってしょうがない。
あとで答えられるようにこの男の特長を覚えておこう。
顔は・・・暗いしサングラスとマスクのせいでわからない。髪は短い。
身長はおれより大きそうだ。手が大きい人は背も大きいって言うし。
声は、マスクで聞き取り辛い。とりあえず、低いけど、そんなに年をとってる感じはしない。
年齢は20歳後半・・・いや、30代だと思う。
考えている間も男の手はやたらと顔を触ってくる。
最初のコメントを投稿しよう!