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「ああ、かわいいね唐丸・・・早く体にも触れたいよ」
「触り始めたら止まらなくなってしまうだろうから、今はここまでで我慢するよ」
帰りたい。本当なら今頃昼寝をしているはずだったのに。
本当におれはもう家に帰れないのか?いや、まだ助かる方法はあるはずだ。
「足が痺れたから縄をほどいてください」
「しばらくしたら取ってあげるよ、するのにこれは少し邪魔だからね」
「おれはなにもしないし、家に帰る!勝手な事を言うなっ」
「・・・そんな口をきいてはいけないよ、唐丸はちゃんとできる子だろ?」
「うるさい、知るかっ、離せ!」
冷静にしなきゃいけないと分かってるのに頭に血が上ってしまう。
暴れて男を振り落とそうとしているけど無駄だった。肩を地面に抑えつけられてより動きづらくなってしまった。
「少し頭の中を整理する時間が必要みたいだね 僕が連れて行ってあげるから、寝てていいよ」
近くに置いてあったらしいタオルをおれに近づけてきた。あの時と同じやつか。
「必要ない、やめろ!」
ここで眠ってしまったらどこに連れて行かれるか分かったもんじゃないし、なにをされるか考えたくもない。
「んんんんーっ、はなっ、はなせええ」
顔を四方八方動かして逃げていたが、とうとうタオルで抑えられてしまった。
「それじゃあ行こうか」
かぎすぎたのか頭が痛い。くらくらする。
シートとバッグに入れられた。まさかこれをやる日が来るとは。
考えてあるのか、馬鹿なのか知らないがバッグのチャックは少し開いていた。
声を出したらすぐ気づいてもらえるじゃないか。
意識を保つのに必死で口を動かす事ができないけど。
かつかつとさっきまでの足音とは違う梯子に足を置く音が聞こえる。
開いてる所から光が射し込んでくる。まだ夕方だったのか。下水道は暗くて腹時計しか頼りにならなかった。おれの腹時計は結構正確。
最初にかいだときより効果が弱まっているらしく、凄く眠いけど眠らされてはいない。
「誰か、だれか・・・」
声が出せる。けど誰かがいないと意味がない。
「静かにしていようね、おやすみ」
チャックが閉められてしまった。
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