3羽目.おれと患者とゴールデンウィーク。

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重い・・・。 「唐丸・・・唐丸っ・・・」 はーい、とか言ってる場合じゃないよな。重いと思ったら布団に寝かされているおれの上に、あの男がいるようだ。 何をしてるんだ? 「う・・・!」 う、おええええええええええっ!! 今までの人生で1番驚いてる。冷静になれ、おれ。学校で1番冷静沈着な男と呼ばれたいおれだ、できるはず。 でも・・・おえええええ。なんて事してるんだ、この男は。 掛け布団の上からまたがって、おれの事を呼びながら、男の性であり、決して、直視したくはない事をしている。 吐きそうだ。なんてものを見せてくれたんだこの男。 つまり、おれがさらわれたのはこういう意味で? 「はっ、はあ・・・はあ、はあ」    みたいですね。こんなに呼吸を荒くしておいて違うと言ったら嘔吐するぞ。 今のこの状況でなら、逃げられるんじゃないか?相手はおれが起きているとは思っていないだろうし。 いや、だめだな。重くて動けない。逃げようとしてもすぐ捕まって終わりだ。 ならどうする。成績まあまあ運動まあまあ体力まあまあのまあまあ人間のおれに何ができる。 ここは多分、男の家だよな。豆電球の明かりしかないから薄目だと丸裸の電球と、橙色の光しか分からない。 両腕を結ぶ物はなくなっているけど、足は足首のあたりを細いひもか何かで結ばれている。 足のひもをどうするか・・・。 ・・・考え事をしている人の目の前でこういう事をしないでほしい。 平常心になろうとしているけど心臓が凄い事になってる。どっくんどっくん言ってる。 「ふう・・・っと」 男がおれの上から退いて、ズボンをはこうとして立っている。足のひもを何とかできれば今すぐにでも逃げられるのに。 いや、待て。もしかしたらこれはおれが勘違いしているだけかもしれない。 実は、同じクラスのシャイな山内が2人で話したくておれを・・・ないな。 山内はあんな声低くないし、おれより背、低いし。 仮に山内だとして、何でおれの上であんな事してたんだ。急にしたくなったのか。そうか。いや、おかしいだろ。 そんな性癖を持つ友達はおれにはいません。 ・・・うん、いない。きっと。
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