3羽目.おれと患者とゴールデンウィーク。

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「かなり面倒だ」 今更気づいた。わざわざ寮を出てコンビニへ行き、戻って階段を上って帰ってくる。 おれは使いっぱしりじゃないんだが。 扉の横にある郵便受けの上のチャイムを押す。 どたどたと歩く音が聞こえる。 「いらっしゃーい!にわとり丸!」 勢いよく出迎えてくれたのは予想通りの目戸井先輩。 「こんにちは、おじゃまします」 「おう、もう航、来てるぞ」 だろうな。小野塚は部屋から直接来たんだからおれより早くなかったら何をしていたんだっていう話だ。 先輩達の部屋は思っていたよりも物がなくて、きれいだ。 「やあ、いらっしゃい」 リビングに入ると、真正面にある1人用ソファーに座っている佐育先輩が1番に気づいてくれた。 「お邪魔します」 「おいとり丸、遅いぞ」 テーブルの上に置かれたお菓子を食べながら言う小野塚。自分の部屋のように堂々と2人掛けソファーに座っている。 「おれは買いに行っていたからな、小野塚と違って」 と言うと、不満げにぶつぶつ言い出す小野塚。事実だろう。 「殿川先輩、お邪魔します」 「こちらこそ、来てくれてありがとう」 小野塚の正面に座っている殿川先輩に挨拶をすると、1番まともに返してくれた。あまり喋りはしないが常識的な人なのか。 「にわとり丸君、小野塚君の隣に座ってくれないか」 「分かりました」 初めてにわとり丸と呼ばれた気がする。気のせいか? 「これ、買ってきたので食べてください」 「サンキュー!早速食べようぜ」 おれが差し出した袋を漁る目戸井先輩。  「お、これ買ったのか」 「おれが食べたかった」 昔ながらの梅のお菓子はとてもおいしい。 「小野塚君、これは何だい?」 「知らないんですか?食べだしたらキリンがないっていうこれを」 「オレも知らねー」 「俺も」 「まじっすか・・・」 こちらを見るな。 どうやら先輩方はこういったお菓子を知らないらしい。小野塚に、オレが買って来たお菓子を1つ1つ説明させている。 「こういう物もおいしいね」 「だなっ!」 殿川先輩も頷いてくれている。 気に入ってくれたようでよかった。
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