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「酒は得意じゃなくてもビールぐらい飲めんだろ」 「ええ」 男は空いていた奥のカウンターに場所を取る。炭の煙、男達の汗や皮脂の匂い、熱燗の湯気。でも私の鼻を突くのはセンセイの残り香だ。 何故センセイは引き止めたか……。センセイはひょっとして私に気があるのかとも考えた。でもそれは明白な自惚れだ。 届いた生ビールを煽る。先にジョッキを空けたのは男ではなく私だった。 「ペース遅いじゃない」 「まあ、このあとのお楽しみがあるからな」 「……」 私は追加注文をし、更にビールを飲む。センセイが私に気があるなら、本当に引き止めてただろう。男の筋肉質な腕に怯んだのだ、きっと。暴力沙汰になったら高尚な身分に差し障る。指に怪我するようなことがあれば歯科医師として死活問題だ。
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