第2章

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三ヶ月前、俺は東京に出てきた。 俺の地元は田舎で、 駅も人が全然いなかった。 だから、東京に向かう日、 見送りをしてくれたカケルと俺は 手を繋いでいた。 カケルは、小さい頃から泣き虫だったけど、 その日は、潤んだ瞳から 涙を流すことはなかった。 彼なりの思いやりだったのだろう。 電車のベルが鳴り響くなか、 ドアが閉まるギリギリまで 俺たちは手を握りしめあっていた。 振りほどかれた手を添えたドアの先で カケルが『元気でね』と言ったのが見えた。
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