ぼっちの宿命

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  「ただまー」 「おかりー」 家に帰ると 俺の妹の小百合(さゆり)が 扇風機の前を陣取りながら返事をする 小百合は 中学三年生で"元"陸上部だ "元"というのは 実は少し暗い話になるが 半年前に交通事故で右足首を失ったため 陸上部を続けることができなくなったからだ まぁ足首が無くなったといえば 聞こえは恐ろしいが 現代の医学はもっと恐ろしい というのも 人体再生技術がかなり進歩していて 足首程度ならたった2週間で 綺麗に再生できるのだという つまりこの再生技術があれば 小百合の怪我は一瞬で治るし 陸上部にもすぐに復帰できるのだ だが これだけ高度な医療ともなると やはりお金も数百万円から ....と、相当なものになるのだ 生憎うちは生まれたときから貧乏なので そんなお金は到底ない 物心つく前に親父が死んでから うちの母さんは女手一つで 俺達を育ててくれた もし 俺が働ければ 小百合の治療は出来るかわからないが 少なくとも母さんの負担が減るし 今よりも快適な暮らしになるのは間違いない
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