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 体力抜群のテルはなんの造作(ぞうさ)もなく、ひと呼吸で立ちあがると、誰にともなくいった。 「さっさといこう。帰れば、朝風呂が待ってる。ウルルク野郎をおいてきぼりにしよう」  なぜ、そこまであの南の国に憎しみをもつのだろうか。テルの胸中がタツオには謎だった。タツオの父・逆島靖雄(さかしまやすお)中将もかの地で玉砕(ぎょくさい)しているが、タツオ個人はウルルクに恨(うら)みはない。  戦争は所詮(しょせん)、戦争だ。勝つ側があれば、負ける側もある。負ければ待っているのは死だった。タツオは進駐官作戦部のいうように、皇国の正しい意志と信念をもっていれば、百戦して百勝すると思っていなかった。兵の士気は大切だが、兵器の優秀さ、兵の練度、作戦の巧緻(こうち)に勝(まさ)ることはない。  3組1班は休むことなく、キャンプを出発した。すこし遅れて、ウルルク外地人の第7班がつかず離れずついてくる。
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