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恐怖と怒りに視界が歪み、紅く濁る。獣化する機動騎兵の前に、俺は立ち尽くしながら吠え続けた。
「ガードナー!」
ガクガクと震える脚は言うことをきかず、膝は折れて躯を支えるのをやめようとしていた。
「濃すぎる魔素に、培養された〈肉〉が反応しておるのだ!」
傍らのタナトスとフェンリルの叫びが耳を衝くが、パニックに陥った脳は恐怖の記憶とイメージだけを連続再生していて、言語を受け付けない。
おぞましいまでの力。
搭乗者を溶かし、コクピットを満たした黒い粘液。
浮かび上がる臓器と脈打つ血管。
剥き出しの頭蓋と垂れ下がる眼球。
俺の肺が、呼吸を拒否して胸を圧し上げる。縮み上がった胃が酸の混じった内容物を吐き出し、鼻と喉を焼いた。
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