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――!
熱くたぎるこめかみを、突如として清廉な風が叩く。
岩清水のように深く澄んだ清浄。吹き付ける風は冷涼な湿り気を帯び、朝霧のような冷気を漂わせている。
――鈴!
鎧と化した肌に結露した雫が肉を冷やし、尖った耳には鈴のような響きが小さく届く――!
――我を、我を振るえ!
無銘?
カタカタと鍔鳴りを繰り返す無銘。その刀身が霧雨に濡れるように輝いている。
その光は濁った瞳を貫き、俺の脳を直接衝いたように感じられた。
「ぬおおおぉぉぉぉおおっ!」
伸びた犬歯を震わせて、俺は腹の底から再び吼える。
今度は恐怖を振り払う為に。
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