闇の眷属

3/44
前へ
/941ページ
次へ
――! 熱くたぎるこめかみを、突如として清廉な風が叩く。 岩清水のように深く澄んだ清浄。吹き付ける風は冷涼な湿り気を帯び、朝霧のような冷気を漂わせている。 ――鈴! 鎧と化した肌に結露した雫が肉を冷やし、尖った耳には鈴のような響きが小さく届く――! ――我を、我を振るえ! 無銘? カタカタと鍔鳴りを繰り返す無銘。その刀身が霧雨に濡れるように輝いている。 その光は濁った瞳を貫き、俺の脳を直接衝いたように感じられた。 「ぬおおおぉぉぉぉおおっ!」 伸びた犬歯を震わせて、俺は腹の底から再び吼える。 今度は恐怖を振り払う為に。
/941ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2838人が本棚に入れています
本棚に追加