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「……王!」
「……さて、御言葉の意味が良く判りませぬな。」
「左様左様。」
私もモノリスの老人と同じく、王の真意を量りかねていた。
暗闇の中で薔薇が強く薫る。
「なに、簡単なことよ。既にロスチャイルドを名のるルナに我が家門を分け、新たなロスチャイルドを興すのだ。」
「如何な優秀とはいえ、ルナには我等が血統に連なる者ではございませぬ。それに、女子に家門を継がせることはマグダラ以来の禁忌――!」
慌てた様子のモノリスは、微妙にその輪郭を震わせている。
「うむ、家門を継がせたいのはルナだが、女子である故、な。そこで、新家を立てるに当たり、主としたい男が居るのだよ。……我が聖堂の騎士〈ヨシュア〉。アナテマ・フェアチャイルドに、我が家督の一部を譲りたいと思うのだ。」
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