其の十二

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一歩、一歩、 互いに引き寄せられるように、ゆっくりと近づく。 土方さんは、以前のように優しくて暖かい瞳で私を見下ろす。 「土方さん・・」 その瞳が、 その優しさが愛しくて。 彼の名を口にした途端、この数日間感じていた寂しさや悲しさ、 すべてが込み上げてきてしまい、気がつけばその胸に抱きついていた。 「・・・好乃」 心臓が、止まるかと思った。 名前を呼ばれるだけで、胸がぎゅっと締め付けられるほど嬉しかった。 改めて、彼の存在がこんなにも私の中で大きくなっていたと思い知った。
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