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さ「…嬉しそうに…?」
雅「父さんが自由に出来た事って、恋愛だけだったから」
恋愛…だけ?
私はまた癖でお姉さんを見つめてしまっていた。
でも私の“?”の気持ちを分かってくれたのか、話をしてくれた。
雅「父さん一人っ子なのよ。だからねぇ、特におばあちゃんが厳しくて。それで病院継ぐのももう決まってて。最初は結婚相手まで決められてたみたいでさ」
そうなんだ。だから、要には自由をプレゼントしたかったんだ…。
あれ?
さ「でも…お姉さんが…」
要は自由になれたけど、お姉さんが病院を継いだわけだよね?
じゃあお姉さんの自由は…
雅「さくらちゃんは優しいね」
さ「え?」
雅「私は桐生家の長女だから。上は下に、少しでも幸せになって貰いたいって思うものよ?だから、私が病院を継いで下が皆自由になれるなら安いもんよ」
そう言って笑ったお姉さんの顔は、さっき見たお父さんの笑顔と似ていた。
雅「だから私も嬉しいのよ?要がさくらちゃんと付き合えて」
さ「私こそ…まさか要みたいな素敵な人と付き合えるなんて…」
雅「要が素敵…か。確かに最近の要は刺が無くなったかなぁ」
お姉さんはクローゼットのドアを閉めながらそう呟いた。
良いなぁ要は。こんな素敵なお姉さんがいて…。
《上は下に、少しでも幸せになって貰いたいって思うものよ?》
私も…そんな風に思って貰いたかったな。
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