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「あいつなら三人ぐらい余裕だろ。それともなに、野々。佐山のことが好きなわけ?だから怒ってんの?俺があいつとシタから」
え?あ、はいいいぃ?
俺が佐山を好きだって?
なんっで、そうなんの?
しかも怒ってなんかいないし!
「俺が怒ってるって?どこが?」
「だってケータイ出てくんなかったじゃん。一緒に学食来ようと思ったのに、全っ然繋がんねーんだもん。電源切ってたっしょ?」
は?ケータイ?
そんなの鳴ってなかったけど。
それ以前に電源なんか切らないし。
健の向かいにトレーを置いて、鞄をガサゴソと漁る。
やっぱり。
何度押しても電源が入らない。
「ごめん、充電切れてた」
長年使ってるガラケーをパカリと開いて、俺は真っ暗な画面のままのケータイを健に見せた。
「ほんとだ。てか、まだそのケータイ使ってんだ?スマホとかに変えたりすりゃいいのに」
「うん。でも、まだ使えるし。変える理由もないしさ」
それに健みたいにちょくちょくお誘いがあるはずもないし。
かれこれ4年目に突入するこのケータイも、まだまだ現役だよ。
「ま、でも良かったわ。怒ってるわけじゃないみたいで。学食で見つけた時も無視されたと思ったから絶対怒ってると思ってた」
え?それってもしかして、あのとびっきりの笑顔、俺に向けてた?
佐山じゃなくて
俺に?
て、うそー!
ヤバいよ。
俺、顔が熱い。
きっと真っ赤になっちゃってる。
こんなんじゃ、健にバレちゃうよ!
「野々?どこ行くの?」
「う、うん。七味、七味取りに行って来る」
顔を隠すように立ち上がった俺は、急いで薬味コーナーへと走って行った。
「七味なら持って来てんじゃん。ほんっと、野々ってカワイイやつ」
その後ろ姿を目で追いながら、トレーの片隅に置かれた七味の小瓶をポケットに隠して健は呟いた。
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