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「おい!野々宮ぁ!」
「は、はい!」
こ、この声は…
恐る恐る振り返ると、厨房の出入口に鬼の形相をした店長が立っていた。
うぎゃー!やっぱり!
俺何かしました?
「テメー、店内見回ってんのか?え?」
いや、怖い。
怖いけど、ここは勇気を振り絞るんだ!
「はい、さっき行ったばっかです」
俺のバイト先であるこのカラオケ店は、他にもビリヤードやダーツ、ゲーセンにボーリングといった施設があって、その全てを取り仕切るのは、この神崎晴海(カンザキ ハルミ)店長だった。
「あぁん?テメーの目は節穴か?今すぐ205見てこい!」
うわーん、怖いよ~。
人一人くらい平気で殺してそうな迫力にタジタジになりながらも、たった今作ったばかりの山盛りフライドポテトをどうしようかと考える。
これを持って行ってからって訳にはいかないよなー。
この俺様店長のいうことは絶対だ。
今すぐって言われたら今すぐなんだよね。
そんな俺の背中をポンと叩いてくれたのは、同じく厨房でドリンクを作っていたバイトの西軌 要(サイキ カナメ)くんだった。
この西軌くん、俺より2つ年下の高校3年生。
バイトに入ってきてから俺がみっちり指導したおかげか、すっかりベテランに育った可愛い後輩だったりする。
何か家庭の事情とかで、受験で大変なのにがっつりバイトまでやっている、ちょっと誉められた子だ。
因みに、年下の超絶イケメン彼氏持ち。
なので、決して同情なんか必要ない。
寧ろ、いつも店長にイジメられてる俺を同情してほしいくらいだ。
「持って行くから行って下さい」というその合図に「ありがとう」と小さく礼を言って、店長の前を通って通路に出る。
はぁ、何で俺だけこんなメに。
店長があんだけキレてたとなると相当な大惨事が予想されるな。
はぁー、行きたくない。
自然と足取りが重くなる。
出来ることならこのまま帰ってしまいたい。
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