短編集 本文

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「個人情報の住む街」10年の付き合い  ハンドルネーム「晴海 巡」という人に巡り会ったのは、2000年の秋でした。  テレビ東京系のバラエティ番組「アド街ック天国」で、「横浜・港北ニュータウン」が、初めて紹介された時でした。僕はテレビ大阪で見ていて、そのセレブな暮らしぶりに、思わず血圧が数十上がったかも知れません。  真新しい洒落た街並みで、ベビーカーを引くニューファミリー。リッチな主婦のランチ。絢爛豪華なショッピングセンター。ド派手なクリスマスのイルミネーション。横浜市都筑区のUR都市機構の開発プロジェクト、港北ニュータウンのすべてを、つまびらかに見てしまいました。このクソ生意気な!! 僕は戦前に発達した阪神間モダニズムの街、古いニュータウン「武庫之荘」に住んでいるので、そもそもブルジョアジーが大嫌い。いったいどんなクソ生意気な奴等が住んでいるのか、ということに最初腹が立って、怒濤の検索活動を始めたのでした。  さんざん検索して、疲れ切った頃に、とある小説サイトにたどり着きました。個人情報の住む街、というサイトです。庶民目線でありながら、気が利いたウイットに富んだ、知のきらめきを感じさせる、実にふつうの人が住んでいました。しかも、小説の内容は、緻密に仕組まれたIT関連の内容。  小説 個人情報の住む街 http://www012.upp.so-net.ne.jp/harujun/rcindex.html  晴海さんは、たとえ偉くても、決して偉ぶらないクールヘッドのウォームハートな人だったので、相互リンクはすんなり進みました。もっと言えば、横浜の人でありながら、そんじょそこらの関西芸人よりもメールの話題がおもしろく、あなどれない人です。僕は、兵庫県の人でありながら、まだ神奈川県や千葉県テイストを引きずっていたので、お互いに歩み寄れてちょうど良かったのではなかったかと思います。たとえば、美味しいたこ焼き屋さんが、大阪を捨てて東京へ行くように、また、有能なお笑い芸人さんが、大阪を捨てて東京へ行くように、ギャグの質はむしろ、大阪よりも総じて面白いのかも知れませんね。
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