短編集 本文

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 たとえば横浜で「グリーンライン」という地下鉄が出来たらそれを教えてもらい、こちらで「阪神なんば線」「京阪中之島線」という地下鉄ができたらそれを教えてあげる。そんなことから、たわいもないお話まで、晴海さんはきっちりレスを返してくれます。こちらが「震災情報」を載せれば、田所稲造 本音の地震対策として掲載してくれたりしました。また、最近のメールでは、長距離用のバイク式自転車で東京や横浜、町田まで出かけられる様子が紹介されていました。どうやら、フィジカルな生活に目覚められたようです。運動不足の僕とは大違い。そして、そんなハイカラな街に住んでいる晴海 巡さんも、「たとえば渋谷に出かける時はやっぱり、ドキドキ、オドオドしますねえ」とのことです。  このような奇縁で、今もなお定期的にメールのやりとりを許されています。一時期リムネットに加入した際にはお友達割引を、リムネット始まって以来、初めての「一面識もないネットワーカー同士のお友達割引適用」の一例になりました。アクセスプロバイダが、僕はベイコムになり、晴海さんがSo-Netになっても、まだまだお友達です。「個人情報をお互いに明かさない」「顔も見たことがない」「どこに住んでいるのかも定かではない」間柄ですが、いちばん大きな点は、どんなときも、メリット抜きで僕とつきあってくれる点があるのだと思います。現住所とフルネームを知ったのは、あれから10年目の今年、本を贈ったお礼に某シティカフェのプリペイドカードが届いた時でした。  書籍の名前は「キズナのマーケティング」でした。 (2010年秋「NTT西日本 コミュニケーション大賞」応募作)
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