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「誘ってる?」 「いえ。指輪……」 「これ? 願掛けにね」 「願掛けですか?」 「学生時代に彼女とお揃いで買ったんだけど、そのときに大きな試験があってね。無事パスしたんだ。それから外せなくなって」 「そう」 「結婚指輪だと思った?」 「ええ。シンプルでこなれた感じが」 視界の隅にセンセイが見えた。いつの間にか隣は同期に変わっていた。 「……」 センセイは同期にも同じように首を傾げるようにして顔を覗き込んでいた。 「彼女が忘れられないとか?」 「まあ、それもあるかな」 駄目だ……皮膚が浮く。さっきまで何とも無かったのに。
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