『白鳥啓介』

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それから更に10分ほど歩き続け、ようやく私と大神先生は食堂へとたどり着いた。 まるで一流ホテルを思わせるような豪勢な自動ドアが開くと、中からは優雅なクラシックが流れ大勢の人達が食事を楽しんでいる。 「奥が、見えない……。」 「この食堂は最大5000人が収納可能な場所ですからね。」 「5000人ですか!?」 あまりにスケールの大きい食堂だ。もはや食堂と呼べないほどの大きさと気品に満ちた部屋の中で、ドレスコードに身を包んだ紳士や淑女の姿も見える。 よくよく見ればこの中で入院服を着ている者はほとんどいない。 やはりここは、施設の中でもかなり高級な場所なのだろうか。 「白鳥さん、あそこの発券機で注文をしてください。」 大神先生が指差す方に目をやると、たしかに発券機を思わせるようなディスプレイを備えた機械が設置されている。 「この施設での食事や日用品の購入には、“ポイント”を使用します。入院当初に皆さん一律で1000Pを病院側から付与してますから、しばらくは気にせず生活してください。」 「ポイント?」 「ええ、ポイントは腕時計の中で管理されてますから外さないようにしてください。」 腕時計?言われてみれば左手首に巻かれた時計は私が持っていたものではなかった。 「まぁポイントについては班員の方に詳しく聞いてくださいね。部屋の中にもルールブックが備え付けてありますから、そちらで確認して頂いても構いません。」
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