『白鳥啓介』

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2012年4月11日 ついに今日、私は限界を迎えた。 埼京線、江戸川橋駅から登る坂道で、ヨレヨレのスーツと首から下げたストラップの先端についたカードキーが、私が会社員であることを周りにアピールしている。 講談社を代表に、オフィス街と呼ばれるこの通りではラフな格好のサラリーマンを見かけることは珍しくない。 だがそれは、昼時に限った話 昼と呼ぶにはあまりにも早い午前10時、 私はヨタヨタとまるでゾンビのように仕事という義務を放棄してオフィス街をさまよっていた。 2011年3月11日の東日本大震災を経て、私は東京へと旅だった。 それまで勤務していた会社の機能が完全に停止したのを機会に退職し、遠距離恋愛で東京に住む彼女の近くへ引っ越すことにした。 幸い、復興支援雇用というありがたい制度を行ってくれた企業の援助により、私は簡単に東京での住まいと仕事を簡単に見つけることが出来た。 それが全ての始まりだった。
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