『白鳥啓介』

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住まいの提供、準備金の支援、企業が用意してくれたあまりにやさしすぎる条件に、若すぎる私はさして 疑うこともなく飛びついた。 結果、月に200時間を超える残業とあらゆる限りの暴言と直接的な暴力、プライベートへの強制的な干渉、いわゆるパワハラ、モラハラと呼ばれるありとあらゆる攻撃を味わうことになった。 その企業のずるい所は、会社が終わると社員を連れ出して浴びるほどの酒を飲ませてやるところだ。 その支払は全て上司が行い、 部下には1円も出させない。 毎月何万も何十万も、頼んでもいない恩が積み重なり私は暴力と暴言に逆らえなくなっていく。 つまり上司が身銭を切って楽しい思いをさせてやる代わりに、度が過ぎる暴言や暴力に耐えて身を粉にして会社のために働けという暗黙の圧力だ。 私をゴミのように蔑む上司と一緒に酒を飲んで私が楽しいと本気で思うのだろうか? 酒に誘われればその日の睡眠時間は3時間程度、断ることなど当然許されず上司の酒の量を気にしながら『楽しめ』と言われて本気で私が楽しめると思うのだろうか? 彼らの極端すぎるアメとムチは私にとってどちらもムチだった。
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