『白鳥啓介』

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そこから先の事はいささか、自信がない。 まるでうたた寝の最中に見た白昼夢のように微かに覚えてる気がするだけだ。 気がつくとそこは仙台の私の実家で、父は電話越しで誰かに怒鳴り散らしている。 『おまえの会社のせいでこうなったんだ!責任取れるのか!?どうやったら人間1人がおかしくなるんだ!?ああ!?言ってみろ!』 父の隣で母は泣いている。 私が泣かせてしまったんだね、ごめんね。 また抗えない睡魔によって私の記憶は沈んでいく。 次に気付いた時、私はどこか病室を思わせる部屋の中で椅子に座り 窓から射し込む夕暮れのオレンジを浴びていた。 ぼんやりと目を薄めながら射し込む夕陽を眺め、かすかに私の脳は思考を加速させる。 きっと私はストレスで精神を病んでしまったんだろう。 4月11日、会社を抜け出して自分の脳を拾うという非現実的な記憶を最後にほとんどの記憶が途切れている。
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