ミスティックトパーズ

4/47
前へ
/47ページ
次へ
客人は店内をゆっくりと回りながら、美しいアンティークジュエリーを眺めている。 彼女の目に止める宝石は価値の高い物が多い。 アンティークに目のきく者のようだ。 周はそんな彼女をそっと離れた所から見守っている。 ただ見守っているわけではない。 彼女が話し出すのを待っているのだ。 ここに来る客人はアンティークジュエリーを探しに来たわけではない。 ある目的があってここに辿り着いたはずなのだから。 彼女を宝石の名前に因んで「ミスティックトパーズ」と名づけよう。価値の無い扱いを受ける無色のトパーズに、金属皮膜の蒸着処置を加えた虹色に輝くトパーズの事を「ミスティックトパーズ」と言う。 まあ、でも長いから「ミスティ」とでも呼ぶことにしておこう。 ミスティは店内をゆっくり回りながらアンティークジュエリーを眺めている。 ミスティはあるジュエリーに目を留めた。チャームの沢山付いたシルバーのブレスレットは、彼女にあまり似合いそうになく、もう少し若い女の子が好みそうなものだ。 ミスティはそれを悲しそうな顔をしてじっと見つめると、何かを諦めるように目を伏せた。 ミスティにはここに来た理由がある。多分それはブレスレットに関係しているんだろう。 周はそんな彼女の様子をじっと見つめている、表情を読み取ろうとする様に。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加