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客人は店内をゆっくりと回りながら、美しいアンティークジュエリーを眺めている。
彼女の目に止める宝石は価値の高い物が多い。
アンティークに目のきく者のようだ。
周はそんな彼女をそっと離れた所から見守っている。
ただ見守っているわけではない。
彼女が話し出すのを待っているのだ。
ここに来る客人はアンティークジュエリーを探しに来たわけではない。
ある目的があってここに辿り着いたはずなのだから。
彼女を宝石の名前に因んで「ミスティックトパーズ」と名づけよう。価値の無い扱いを受ける無色のトパーズに、金属皮膜の蒸着処置を加えた虹色に輝くトパーズの事を「ミスティックトパーズ」と言う。
まあ、でも長いから「ミスティ」とでも呼ぶことにしておこう。
ミスティは店内をゆっくり回りながらアンティークジュエリーを眺めている。
ミスティはあるジュエリーに目を留めた。チャームの沢山付いたシルバーのブレスレットは、彼女にあまり似合いそうになく、もう少し若い女の子が好みそうなものだ。
ミスティはそれを悲しそうな顔をしてじっと見つめると、何かを諦めるように目を伏せた。
ミスティにはここに来た理由がある。多分それはブレスレットに関係しているんだろう。
周はそんな彼女の様子をじっと見つめている、表情を読み取ろうとする様に。
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