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「何かお探しですか」
漸く周が少し離れた場所から、ミスティに声を掛けた。
「いえ……アンティークジュエリーが好きで、つい見入ってしまいますね」
「シルバーのブレスレットがお好きなのですか」
周のその問い掛けは少し意地悪だと思う。周だっておそらく彼女がそのブレスレットが好きでは無いという事ぐらい分かっているはずなのだから。
ミスティは、少し目を泳がせ、ぎこちない笑みを浮かべて首を横に振った。
「シルバーを着けるには、少し年を取りすぎてしまいましたから」
「そんな事はないと思いますが、同じシルバーでももう少し大人っぽいものの方がお客様にはお似合いだと思います。何か気になる商品があれば、試着する事も出来ますからお申し付けくださいね」
周が微笑むとミスティは頷きながら、何か言いたそうに口を動かす。後もうひと押しという所だろうか。
「あの、こちらでは他の商品は扱っていないんですか?」
周は問い返す。
「例えばどんな物でしょうか、あなたの求める物は」
その声はまるで魔法の言葉の様に深い声色で放たれる。ミスティは周の瞳に魅入られたかのように表情の無い顔でその言葉を口にする。
「ペリドットの泪を」
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