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「留守電と番号変更が同時に起こっていますよ」
『………』
心なしか動揺が伝わってきたような気もする。
沈黙が流れる。凛音が何事ことごくっと唾を飲み込む。
『只今留守にシテオリマス。ピーと鳴りましたら――』
「言い直さないでください」
『ケチだな松風は。それで何のようなんだよ私も私で忙しいんだぞ?』
割りと真剣目に応えが返ってくる。一見勤勉な仕事人を斬が邪魔したかに見えなくもないが、
「眠り姫」
『な、なんだよ』
「ハンモックの上で気持ち良さそうに今にも眠りに落ちそうな瞳で此方を見ている人が忙しいとは残念ながら、どう思考を豚のレベル迄に下げてもならないと思われますが?」
斬から出たとは思えない皮肉の言葉。感情が吐露したとは言えないものの、学校生活での彼を知るものなら耳を疑うだろう。
『前々から思ってたんだけど、松風は私にだけ風当たりが強くない?』
「茨姫に命令されていますから、とにかく矛盾や指摘できる部分があれば、遠慮なくむしろ抉るかの如く接しろと」
『鬼かあの無口ロリ!?』
松風ナナセ曰く、
いつも寝てばっかりでその分を他のメンバーにしてもらってるんだから、多少のストレスの捌け口位になってもいいんじゃない?というかなりなさい。
春野飛鳥曰く、
別に大した事はないんだけど、僕にティーファの毒牙が向けられるのだけは何とか避けたい。一人の尊い勇者(犠牲者)が回りを助けてくれるなんてホントにありがたいよ。
ティーファ・カーシェス曰く、
……………………ネルは私のだから。
といった三者三様の思考が今の斬にそのままフィードバックされているわけだ。
「今の言葉しっかりと茨姫にお伝えしておきますので」
『ちょ、それは駄目だって!!ティーファのあれは身体じゃなくてこう、なんというか精神をズタズタに切り裂かれるんだって!!』
「まぁ冗談はさておき」
『冗談だったの!?』
「九割程本気ですが?」
『それはほとんど本気ですよね?というか私を殺す気なの?』
ディスプレイの先には泣きそうな顔になるネルがいる。寝癖が盛大に事故主張しているセミロングの黒髪。くっきりと突き出た唇には涎の後がある。
「殺す気は眠り姫の返答次第です。ここに夢見凛音という、スパイがいるんですが――」
「ちょっと何私の事不審者以上の扱いしてんるんですか!?」
流石に危機逃すことはなかったようだ。
「とにかく、この人の事なのですが」
『うん、今日から配属だよ?』
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