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『ハロハロ、ちょっとは私の言ってる意味がわかったかしら?』
「はいマスター、理解しました」
二回弾くと共に金属音。そこから駆け巡る感覚が右目にまで繋がり、幾何学的模様が描き出された。理解できない文字の羅列が過ぎ去った後映し出されたのは、他ならぬ主の顔であった。
ストレートに伸びる黒色の髪。瞳は黒曜石の様に爛々と輝き、少年とは対称的に活力に満ちている。ディスプレイには胸の辺りまでしか映っていないが、それでも存在感を放つ双丘は破壊力が計り知れない。
『まぁ他にも機能はあるらしいけど、今はいいや。今日のところはもう帰っておいで』
「はいマスター」
そこで通信が切れ、右目に映し出された主の顔も消失した。
少年はふと空を見上げた。やはりその目に光りはなく、夜空の色をのせていた。少年は一つ目を閉じると、握ったままの拳銃を右に滑らせ発砲。確認することもなく腰のホルスターへと収納する。その一連の動作に一切の無駄はなく、ある種機械さえ彷彿とさせた。
乱調な電柱が照らし出したのは少年だけではなかった。
銃弾を撃ち込まれ地面にの垂れていたのは人とは異なる、人にあらざるものだ。確認できる五体の異形のなれの果てに共通点はほとんどない。小型犬のような小さいのから熊のような大型まで。しかし、そのどれもにあるのが朱に光る宝石のような代物だ。みな揃って撃ち抜かれている。
少年は何の感慨もなくその場を去った。見上げていた星々、中でも一際輝く星が陰るのにも気付かず。
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