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戦闘から帰ってきた少年を待っていたのは、爆発の轟音と衝撃だった。強烈な耳鳴りに襲われるが、特段日常と変わらず平然と歩みを続けた。
「ちょっと飛鳥!!あんたまたなにやってんの!?」
「けほけほ、ナニナニ?なんて?」
「なにやったかって聞いてんの!」
「別に、新しい通信機器の調整中で」
「それならこんな爆発起こらないでしょうが!?」
「失敗は付き物だよ?よく言うじゃん。失敗は成功の母のお隣さんって」
「それ、ほぼ赤の他人じゃない!?」
日常通りの光景に少年も日常通りに行動する。ホルスターから銃を取り出すと、所定の位置に戻し今回使わなかった武具も身体から取り外していく。
「あっ、お帰り斬」
「マスター、只今戻りました」
相手との口論が終わったのか主の視線は漸く少年の方へ。ちなみに口論で主が納得して勝ったところを少年を見たことがない。
「どうだった?ミーの掃討は」
「問題はありませんでした」
「まぁ本来のお仕事ではないけどね、斬にとっては」
「教授、只今戻りました」
床に空いた穴からひょこっと顔を出している少女。爆発の衝撃で空いたようだ。
紺の髪の毛がもじゃもじゃに絡まり、顔の所々に煙の後が。くりくりとした瞳は獰猛な野獣と好奇心に満ちた幼子を織り混ぜたようだ。
教授と呼ばれるのにいささか違和感を覚えるが、彼女はれっきとした教授なのである。博士論文を何度世に送り出すほどの。
「とにかくお疲れ様。今日の任務はもうないからサクッとお風呂入って寝なさい」
「はい、マスター」
少年は主に軽く一礼するとそのまま部屋から姿を消した。残ったのは主と教授だけ。
「ふぅ、やっぱり僕には冷たいな斬は。会釈ぐらいしてほしいんだよ」
「そんな柄じゃないでしょう。それに飛鳥もわかってるんでしょ?斬には…」
「わかってるよ」
何処か物憂い気になる二人であるが、次なる言葉はそれを吹き飛ばすには充分だった。
「それはひとまずおいといて、これはどうするのよ?」
「これ?」
主が指差すのは教授、ではなく教授が頭を出している穴。これまた綺麗に空いている。
「……ヨロシク♪」
「駄目に決まってるでしょうが!!明日までに直しときなさいよ。直ってなかったら研究費から引いとくから」
「ちょっ!?マジっすか!?」
「じゃあ、また明日」
返事も聞かぬ間に主も部屋から姿を消す。
一人残された教授は、
「ひ、一人で出来るもん…」
見た目相応の泣きべそだった。
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