変人の巣窟

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「とまぁそんなド変態のイカれ医者がいたお陰で人体にも、また大気中にもマナが在ることが認知されたわけだ」 「先生ー言い過ぎですよ」 「煩い、たくこんな糞面倒臭いもん発見しちまったせいでこっちは大迷惑なんだよ。教える内容は増えるは理論なんてもん学者でもない俺が知るかってんだ」 「先生ーぶっちゃけ過ぎ」 教師らしからぬ発言をしているいちよう現代社会の教師であり、このクラスの担任である御作夜鷹(ミツクリヨダカ)は本日も平常運転である。 「お前らだって大した興味もねぇだろうが。大雑把にマナの発見で世界は便利に成りましたって覚えてりゃそれでいいんだよ」 件の医者がその後発見発表したマナの存在は世界を震え上がらせた。医学分野では身体機能の向上や治癒力増進。新薬への応用にも期待が持たれた。当時反映されないであろうと思われていた日常生活における還元はそれから十年後のある鉱石により成されるようになる。 「しっかしなんでまたここでマナ結晶が出ちまったのかね。資源不足の代名詞なくせによ」 マナの発見に呼応したかのように採掘されるようになった玉虫色の純結晶。従来の鉱石との大きなそして決定的に違う特徴は魔素回路、つまりはマナの通り道が内在していることだ。それによりマナの工業的な使用が可能となり、マナ鉱石発見から百年も経たないうちに生活水準は瞬く間に向上、今やこれを利用していない物はないといっても過言ではない。 「まぁそれこそ俺には関係ねぇ。政府はウハウハだろうがな。あー、そう思うとちとムシャクシャするな。儲かってんだったさっさと国民に還元しやがれ、主に給料にボーナスに。この献身的に国家に尽くすいたいけな教師によ」 なら授業態度ぐらい真面目にしろよ、という普通なら教師が言う事を生徒達は全力で感じていた。 真面目になってもそれはそれで気味が悪いのだが。 ふと鳴り響く終了の合図。この授業に緊張感もへったくれもないのだが、それでも生徒にとっては大事な区切りだ。 「よし、今日はここまでだな。いちようは復習しとけよ。赤点とって小言を言われるのは俺なんだからな。目つけられない程度にサボっとけ。委員長」 「は、はい。起立、例」 ヒラヒラと手を振りながら教室を後にする御作。 去り際の目には喧騒の中、一人空を見つめる少年が映っていた。
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