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この言葉を作家に言うのは編集者として失格かもしれない。
しかし、彼女は平然となに食わぬ顔で時計を見ていた。
『美容の為にお昼寝の時間どすわ』
そう言ってベッドに横たわり布団の中に消えていった。
「バン!!!」
僕は机を勢いよく思い切り叩きつけた。
無造作に彼女の煙草を一本取りだし火をつけ吹かした。
後から気づいたが、こういう時は不思議とむせないものである。
『本当にもうい い加減にして下さい!
今日は締切日ですよ?貴女、プロなんでしょ?
この際だから言いますけど、前回の作品にも絶句しましたよ!
熟女介護士がネカマ、鼻毛が常に出ているエステティシャン、覗き見が趣味の残念クオーター眼鏡女を仲間に引き連れてピーターパンをストーカーする物語だったですよね?
その前なんかはアニソン歌手になりたいキムチが大好物のツインテールの豚ゴリラの話
…アナタ一体何が書きたいんですか?』
・・・
僕は我に返り無造作に煙草を消した。
『す、すいません。言い過ぎました』
彼女の方をソッと見てみる。
しかし布団は微動だにしない。
しばらくして布団の中からか細い声が聞こえた。
『……ありがとうどす』
しばらく沈黙が続き再びか細い声が聞こえた。
『煙草……最後の一本だったどす』
慌てて煙草の中身を確認した。
菊さんが言うように僕が最後の一本を吸ってしまっていたようだ。
『あっ!新しいの買ってきます』
僕は急いで扉に向かった。
『お待ちどす!……禁煙したかったから丁度良かったどす』
彼女は布団から少しだけ顔を覗かせた。
『こんな私でも中学一年生の時に小さなコンクールどすが賞をいただいたどす。
一生懸命書いたから本当に嬉しくて嬉しくて涙が止まらんかったどす。
昨日のことのように覚えているどす。
「流石、鴨志田てらの娘。天才少女!」
と囃し立てられたもんどすわ。
しかし、ある日、編集者と母の会話が聞こえたどす。
母が圧力をかけていたらしいどす。
挙げ句には自分の作品の中身を見てビックリどすわ。
編集者が勝手にうちの作品に手を加え原形がなかったどす。
笑うどすやろ?おかしいどすやろ?
……悔しかったどす。
それ以来、真面目に書くのを辞めたどす』
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