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彼女の頬に一粒の涙が滴る。
……そんな過去があったなんて知らなかった。
彼女は彼女なりに辛い経験をしてきたのか。
もしかしたら母や編集者に復讐をしたかったのかもしれない。
『けど、編集者はんは違うどす。
このままでは、うち腐ってしまうどす。
今日からが鴨志田 菊としての新しい一日どす。
必ずキチンとしたのを書き上げるどす。
これは鴨志田てらの娘としてではなく「鴨志田 菊」として・・・絶対に!』
彼女は鼻を咬み布団から立ち上がり机に向かった。
『プライドを傷つけてしまったかもしれません。
若輩者の僕が言うのも生意気かもしれません。
けど菊さん、これだけは言わせて下さい。
菊さんの設定は個人的には大好きです。
ボタンが掛け合えばきっと素晴らしい斬新な作品が書けると僕は心底信じています』
彼女は目を会わせずこくりと頷いた。
『また後で伺わせて頂きます。失礼しました』
僕は静かに退室した。
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