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フーー
大きなため息がでた。
僕はトイレで少し休憩をとることにした。
これで良かったのだろうか?
菊さんにとった行動は正解なのだろうか?
他の編集者の人ならどうしていたのだろうか?
菊さん、祥平さん、亮さんは本当に今日中に作品を完成させてくれるのだろうか?
……色々な不安が噴水のように一気に込み上げてきた。
結果次第では職を失うかもな。
そもそも編集者という職に僕は向いていなかったのかもしれない。
じゃ僕は何故、編集者という職を選んだのだろう?
……小さい頃、正義のヒーローになりたかった僕は、いつの間にか警察になる夢を抱いていた。
いつかは映画やドラマのように悪人を成敗したい!
困った人を助けてあげたい!
……僕は大学三回の夏に興味本意で警察の説明会に行った時のことを思い出した。
腕っぷしの強そうな奴がゴロゴロいた。
正義感に満ち溢れた顔の奴がわんさかいた。
ひたすら勉強している奴があちらこちらいた。
たまたま隣に居合わせた青年と少し話す機会があった。
どうやら彼の親父さんも警察官であったらしいが子供の頃に親父さんは事故の交通整理中に車に跳ねられ殉職したらしい。
彼は父を誇りに思い父のような警察官になりたいと目を輝かせ言っていた。
僕とは背負っているものが違いすぎる。
その温度差の光景を目の当たりにし自分の薄っぺらさが恥ずかしくなった僕は説明会を受けずに帰ることにした。
・・・彼らに勝るものなんて何一つない。
闘うのを避けて逃げる道を選んだ。
勿論、この話は今でも僕の胸の内にしまっている。
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