課長の涙

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「なぁ~」 「私ね……。新しい仕事することになったの!」 俺が言いかけた時、彼女が遮るように言った。 「イタリアでデザインの仕事」 「イタリア?」 俺は上半身を起こし彼女を見た。 彼女も上半身を起こし話を続けた。 「やっと私の仕事が認められて……。5年は向こうで仕事するつもり」 「お前……。それって……」 俺は嫌な予感がした。 「やっと掴んだチャンスなの。だから……」 「そっか……。お前の夢だったもんな。海外で仕事をするのが」 大学時代から彼女が言っていた事だ。 将来はデザイナーになって海外で仕事がしたいって……。 「安心して……。待っててなんて言わないから」 俺は自分の予感が的中したことを悟った。 「それは……。別れるってことか?」 「5年は長いわよ。貴史にはこっちに大事な仕事がある……。私にも……。 シャワー借りるわね」 彼女はバスルームへと入っていった。 俺は久しぶりにタバコに火を付けると窓の外を見た。 月明かりがきれいな夜だった。
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