617人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぁ~」
「私ね……。新しい仕事することになったの!」
俺が言いかけた時、彼女が遮るように言った。
「イタリアでデザインの仕事」
「イタリア?」
俺は上半身を起こし彼女を見た。
彼女も上半身を起こし話を続けた。
「やっと私の仕事が認められて……。5年は向こうで仕事するつもり」
「お前……。それって……」
俺は嫌な予感がした。
「やっと掴んだチャンスなの。だから……」
「そっか……。お前の夢だったもんな。海外で仕事をするのが」
大学時代から彼女が言っていた事だ。
将来はデザイナーになって海外で仕事がしたいって……。
「安心して……。待っててなんて言わないから」
俺は自分の予感が的中したことを悟った。
「それは……。別れるってことか?」
「5年は長いわよ。貴史にはこっちに大事な仕事がある……。私にも……。
シャワー借りるわね」
彼女はバスルームへと入っていった。
俺は久しぶりにタバコに火を付けると窓の外を見た。
月明かりがきれいな夜だった。
最初のコメントを投稿しよう!