気持ちに蓋をして

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いよいよプロジェクトが動き始めた。 まだメンバーがちゃんと決まっていないため今のところ内装デザインチームは奥田課長と私だけ。 だから部屋もなく結局、営業部の自分のデスクで仕事をしていた。 まだ始まったばかりのプロジェクトで会議の嵐……。 わたしはその資料作りの為に毎日のように残業をしていた。 「美由、今日も残業?」 帰り支度を終えたひよりが話しかけてきた。 「月曜日の会議の資料作らないとね」 「な~んだ、つまんない!せっかくの金曜日なのに」 口を膨らませて文句を言う。 そんなひよりは何だか可愛い。 「千恵と飲んで帰ればいいじゃない?」 「今日はデートだって!」 「デート?この間合コンした弁護士?」 「なんだか今日は違うみたい。さっさと出てっちゃったのよね~」 そこへ義春が帰ってきた。 「なんだ、まだ仕事してんのか?」 私達を見つけた義春は自分の机ではなくこっちにやってくる。 「お帰り」 「義春もう帰る?」 ひよりの標的は義春に切り替わったようだ。 「これから報告書書かないとな」 「とか言って、本当は美由と一緒にいたいとか?」 「ちげーよ!」 「はいはい。邪魔者は退散するわよ」 ひよりはすんなりと諦めたようだ。 「気をつけて帰りなさいよ」 「じゃまたね。義春、美由に手出すんじゃないわよ」 ひよりはニヤニヤしながら部屋を出て行った。
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