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松本が離してやってくれというので俺はため息を吐きながら高山を解放した。
ただしそこを動くなと言う条件付きで。
こっちには今にも歯を剥きだして襲いかかろうとしてる番犬がいる。
もちろん長谷部の事だ。
まっ、長谷部も……と言う事にしておこう。
松本は俺の横に立つと高山に話かけた。
「高山さん……ごめんなさい。あなたが結婚してるから付き合えないとかそうゆう事を言ってるんじゃないんです。私は……少し前まで本当に高山さんが好きでした。結婚も真剣に考えてました。でもあなたは他の女性と結婚した……」
「俺を恨んでるってことか?」
松本は首を横に振った。
「いいえ。私はあなたの幸せを願ってるだけです。私は……あなたの幸せをずっと願ってました。だから……もうやめて……」
松本は肩を震わせて泣きだした。
俺はそっと肩を支えてやる。
こいつは自分の事よりも相手を先に思う。
どんなに怖い事があっても辛くても決して責めたりしない。
『高山さんには幸せになってほしい』
こいつは前にも俺にそう言っていた。
なんてお人よしなんだってそん時は思ったけど……。
それが松本なんだよな……。
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